先日。
ウ〜ウ〜ウ〜カンカンカンカン!
けたたましい消防と警察のサイレンがやけにすぐ近くで止まるので、
驚いてベランダに飛び出したら、
うちの目と鼻の先のマンションの4階の一室が、燃えていた。
燃える部屋の隣の、洗濯物が干したままのベランダに、
わらわらと消防士が張り付いている。
どうやら、電線がジャマで、せっかく駆けつけたはしご車が
役に立たないらしい。
すぐ消えるかと思いきや、もうもうと上がる
時に黒煙、時に白煙は一向に衰えず、暴れる竜のごとく
春の強風にばたんばたんとその首を左右に振り回し、
それの合間から時折赤黒い炎が顔を出した。
騒然とする現場を目の前に、なかば呆然と、
「あぁ、あの洗濯物はもうダメだろうな・・・消防士も土足だろうし」などと
しょうもないことを考えては、「対岸の火事」「高みの見物」とは
よく言ったものだ、と自嘲しつつ、消防のヘリだろうか、
上空を旋回する赤いヘリのバラバラ音がやけに神経に障るのを感じていた。
その度に東北の被災地のことが頭をよぎった。
幸い火は小一時間で消え、けが人も出ず、夜には何事もなかったかのように
静かになったけれど、今もベランダから、窓ガラスがきれいになくなり、
焦げて黒々と口を開けた彼の一室に、黄色いテープがひらめくのが見える。
それ以来つい1日1度、それとなく、怖々と、カーテンの隙間から
その部屋を覗いてしまう。
日常と非日常の確固たる境界線を探すかのように。